TERIYAKI

2026年5月12日

店主・来栕けい氏が釣り上げた170kgのクロマグロを味わう、ボニュ(代々木)食事会レポート


2026年5月、TERIYAKI美食倶楽部のメンバーで代々木の「ボニュ(Bon.nu)」を貸し切らせていただいた。8名での会である。きっかけは、店主の来栖けい氏が相模湾で170kgの本マグロを一本釣りで釣り上げた、というにわかには信じがたい話を耳にしたこと。これはどうしても食べに行かねば、ということで席を取った。

1日3組限定の予約困難店「ボニュ」とは

小田急線参宮橋駅から徒歩6分、代々木の閑静な住宅街にボニュはある。美食家として知られる来栖けい氏が2015年にオープンしたフレンチで、完全予約制・1日3組限定の予約困難店として食通の間で長く名を残してきた一軒だ。

「シンプル+オリジナリティ」をコンセプトに、調味をほぼ使わず素材だけで構築する独自のスタイルで知られている。天然記念物の見島牛や、年間1頭しか出回らない幻の竹の谷蔓牛といった、ここでしか出会えない食材も登場する。

引き算で組まれたコース、料理レビュー

一本釣り 〜クロマグロ〜:店11年で初めて出す本マグロ

一皿目から、いきなりクライマックスである。来栖氏が相模湾で釣り上げた170kgの本マグロ。小学生以来の釣り、しかも人生初の海釣りだったという。「一軍の船でないと釣れない」と言われた船で挑み、午前中の1投目でいきなりヒット。午後にはさらに大きい個体が掛かったが、浮上時に300kg超えのまま2時間半経過し、糸が持たずに逃したという話を、来栖氏ご本人が席に着いて聞かせてくれた。

そして驚くべきは、オープンから11年、ボニュは店でクロマグロを出したことが一度もなかったということ。釣り上げた70kg分を持ち帰ったから「出すしかない」ということで、いまコースに組み込まれている。今回が最後の提供だそうだ。

調理は徹底して醤油を使わない。マグロの骨をギリギリまで焦げ茶色になるまで焼き、水と一緒にミキサーで回して骨のスープを取る。塩も醤油っぽいニュアンスを出すために茶色くなるまで焼いたものを使い、赤ワイン、赤ワインビネガー、米油と合わせて塗っているだけ。「白ワインバージョンも試したが、赤の方が圧倒的に合った」とのこと。口に入れると、確かに醤油は一切ないのに、それを連想させる香ばしさと深みがマグロの脂に乗っていく。

抽出 〜毛蟹〜:本来1人1匹分のスープ

毛蟹のスープ。本来は1人1匹分の想定だったというが、この日の毛蟹が想定より大きく、2匹で4名分として供された。カニ味噌も贅沢に溶け込んでいて、口に運んだ瞬間に蟹の香りが鼻に抜ける。

丸揚 〜椎茸〜:衣に「炊いたご飯」を使う発想

椎茸の傘を丸ごと揚げた一品。ソースは軸と、傘表面の焦げて剥ける薄皮から作る。衣の作り方が独特で、通常は粉→卵液→パン粉の手順のところを、卵液の代わりに炊いたご飯をミキサーで回したものを使う。粘度が出て、衣が中心に集まるのだという。

「椎茸は通常、軸の方を味わってほしいとされるが、揚げに関しては絶対に傘の方が美味しい」と来栖氏。香りと食感の暴力的なまでの厚みに、テーブルが静かになる。

カルボナーラ 〜丸鶏〜:鶏卵と丸鶏だけで組む

カルボナーラといっても、使うのは鶏卵と丸鶏、鶏から取ったスープのみ。卵黄だけで麺を絡め、上に卵白のソースを乗せる。表面の渋い部分にはほんの少しビネガーを効かせてある。「完璧に混ぜず、ざっくり混ぜながら食べる方が美味しい」という指示に従って絡めると、卵黄の濃度と卵白のふくよかさが交互に立ち上がってくる。鶏だけでここまでの完結感を出せるのかと唸った。

ボニュ焼き 〜竹の谷蔓牛サーロイン〜:6時間、最大火力だけで焼く

そしてメインのボニュ焼きである。この店の代名詞であり、来栖氏の料理思想が最も濃く出る一皿。

使うのはフライパンだけ。しかも弱火は一切使わず、マックスの火力のみで6時間焼く。低温調理は「抜けるべき水分が抜けないから一番ダメ」と一刀両断。冷たいフライパンに常温の肉と塩、油を乗せてアルミを二重にかぶせ、いきなり最大火力でスタート。「ジュー」と音がしたら3〜5秒で火を止め、フライパンが触れるまで(20〜25分)余熱で火を入れる。これを延々と繰り返すのだという。

毎回、フライパンに出てきた水分を拭く。水分は焼いている時にはほぼ出ない、温度を下げないと出てこない。ただし下げすぎると肉が冷たくなって「肉が死ぬ」ので、ギリギリまで下げる。水分が出なくなったら8割完成。そこから銅のフライパンで、同じ個体のケンネ脂(牛の腎臓周りの脂)で揚げ焼きにして仕上げる。

来栖氏曰く、フランス料理の「焼いた時間と同じだけ休ませる」というセオリーは間違いではないが、1回休ませただけでは水分は出切らない。「『肉汁が出る』と言われるものの大半は実は水分」だという。6時間は「かけたい」のではなく、最速でこの仕上がりにするための最短時間、というのが衝撃的だった。

今回は手前から奥にかけてウェルダム→ミディアムウェル→ミディアム→ミディアムレアのグラデーション。普段はレアの面は出さないが、今回は手前を茶色くなるまで焼いてメイラード層を作り、断面全体を一緒に食べて成立させる構成になっていた。一切れの中で何度も味が変わる。これは確かに「ステーキ」という言葉では収まらない料理だ。

ボンファム 〜クロマグロ〜:大トロのジャバラで組む古典フレンチ

終盤、来栖氏のマグロが再び姿を変えて登場する。フランス料理の古典「ボンファム」は本来、舌平目やドーバーソールで作られる調理法だが、ここではクロマグロで組む。骨でシャブリソースを取り、卵黄ソースと卵白ソースを別々に作って、完全に混ぜずにマーブル状のまま焼き上げる。仕上げに赤ワインと赤ワインビネガー。

使われたのは大トロのジャバラ(一番上の脂が層になった部分)。「中トロでも火を入れると固くなって美味しくないが、大トロのジャバラなら火を入れても旨味と質感が成立する」という説明が、口の中で完全に腑に落ちる。

デザート:寒天で組む凍頂烏龍茶のゼリーと、できたて生クリーム

「ドリップ 〜凍頂烏龍茶〜」は、ゼラチンではなく寒天で組まれている。ゼラチンは塊のまま喉を通るが、寒天は形を保ちつつポロポロと崩れる食感の差を狙ったもの。茶葉は飲用グレードを使用していて、食用グレードとは香りが全然違うのだという。

組み合わせる「定番 〜ミルク〜」は、この日のために作ったばかりの生クリーム。牛乳ベースで脂肪分は通常の半分程度、ナイフで切れる程度の固さで保たせている。最後まで引き算の哲学が貫かれている。

会の雰囲気

来栖氏が直接、一皿ごとに食材と調理の話をしてくれるのがこの店の醍醐味だ。マグロの一本釣りの顛末、ボニュ焼きの水分管理の理論、椎茸の衣に炊いたご飯を使う理由。話のディテールが具体的で、終始テーブルから「えっ」「そういうことなのか」という声が漏れていた。料理を食べるというより、料理を読み解いていく時間に近い。

8人とも食べ歩きには相当な経験があるメンバーだったが、それでも全員が初体験の食感や香りに出会っていたと思う。

まとめ

49,800円のスタンダードコースに加え、リピーター向けには69,800円のスペシャルコースもある。決して安くはないが、この夜のクロマグロは二度と再現されないし、ボニュ焼きの設計思想は他のどんな店でも聞けない。素材と調理法の徹底した引き算が、ここまで濃密な余韻を残すのかと唸らされる一軒だった。次回のTERIYAKI美食倶楽部の食事会もお楽しみに。

店舗情報

ボニュ(Bon.nu)
TEL:03-6300-5423
住所:東京都渋谷区代々木4-22-17 クイーンズ代々木 1F
https://teriyaki.me/articles/3007

テリヤキ編集部

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