2026年6月3日、TERIYAKI美食倶楽部のメンバー7名(僕を含めて)で、神保町のイタリアン「ALTER EGO(アルテレーゴ)」を訪ねた。古書店街の路地に佇む一軒家で、僕にとっては数年ぶりのコースになる。よく食べる顔ぶれが揃う会ということもあり、事前に「多めに」とお願いしてあった。この日の皿を貫くテーマは、ひとことで言えば“産地”。どの料理も、日本のどこかの地名から始まる。

神保町の一軒家、ALTER EGO(アルテレーゴ)とは
ALTER EGOは、神保町駅から歩いて1分ほど、古書店街の一角にある一軒家のイタリアンだ。かつて和食の名店「傳」があった建物で、2019年に開業。2025年には数ヶ月の休業を経て店内を一新している。1階はカウンター、2階に個室とダイニングを備え、用途に合わせて使い分けられる造りになっている。
店名の「ALTER EGO」は“分身”の意味。イタリアで日本人として初めてミシュランの星を獲得した徳吉洋二シェフが、自身の料理を日本で表現する場として立ち上げた店だ。徳吉シェフはミラノに「Ristorante TOKUYOSHI」を構え、その前にはモデナの三つ星「オステリア・フランチェスカーナ」でスーシェフを務めた人物。神保町の現場で腕を振るうのは、そのミラノ本店でスーシェフを務めていた平山秀仁シェフだ。技法はイタリアそのものでありながら、ホロホロ鳥や鴨に至るまであえて国産を選ぶなど、食材への姿勢に一本筋が通っている。食べログでも3.9点を超える高評価を集め、ミシュラン東京にも名を連ねてきた一軒で、予約は決して取りやすくない。価格はディナーで2万〜3万円ほど。入り口には生ハムの原木が吊るされ、イタリア・ベルケル社のスライサーで薄く引かれていく。
宮崎から十勝まで、産地を辿るコース
この日のコースは、まさに日本列島を縦断するような構成だった。皿が運ばれてくるたびに地名が読み上げられ、その産地がそのまま味の芯になっている。印象に残った皿をいくつか挙げたい。
幕開けは、宮崎のマンゴーと水牛モッツァレラ、18ヶ月の生ハム

最初の一皿は、宮崎のマンゴーに水牛のモッツァレラ、そして18ヶ月熟成の生ハムを重ねたもの。フォークを入れると完熟マンゴーの果汁がにじみ出し、ミルクのコクをまとったモッツァレラがそれを受け止める。最後に熟成肉の塩気と旨みが追いかけてきて、甘い・濃い・しょっぱいが一皿のなかでゆっくりほどけていく。冷たい前菜なのに、余韻はどこか温かい。幕開けから、この店のバランス感覚を見せつけられた気がした。
畑と海が地続きになる、とうもろこしと塩水うに

続いて、宮崎産ゴールドラッシュのとうもろこしに、北海道の塩水うに。とうもろこしはそれ自体が砂糖菓子のように甘く、そこへうにのねっとりした旨みが重なると、畑の甘みと海の旨みが地続きになっていく。ここから先は、魚介と野菜が産地ごとに表情を変えていった。厚沢部・JETファームのアスパラガスには北海道の毛ガニ、焼津の金目鯛には千葉のミニズッキーニ。別海町の北寄貝は秋田のトマトとカラスミで磯の香りに厚みを足し、京都の加茂茄子は静岡のフルティカトマトで角を取る。一皿ごとに地名が切り替わるたび、味の輪郭もくっきりと入れ替わっていく。
メインは十勝のロイヤルマンガリッツァ豚

メインは、十勝のロイヤルマンガリッツァ豚。もこもことした被毛が特徴の希少種で、脂に甘みがありながら、不思議と重さを感じさせない。噛むほどに肉の香りが立ちのぼり、赤身の旨みがじんわり広がっていく。このあとに米料理のボンバ・ディ・リゾ(米のコロッケ)が挟まり、満ちてきた腹にもうひと押しの満足感が加わった。
締めは、メロンに山椒を効かせたドルチェ

締めのドルチェは、茨城のタカミメロンにマスカルポーネ、そして秋田の山椒。メロンの甘さとマスカルポーネのコクに、山椒の青くぴりっとした辛みが差し込む。最後の一皿まで気を抜かせない、というのがいかにもこの店らしい。季節の素材をイタリアンの技法でまとめた料理は、どれも輪郭がはっきりしていて、食材の出どころがそのまま味の芯になっているような印象だった。
会の雰囲気
今回はよく食べる顔ぶれが7名。普段から食べ歩いているメンバーばかりなのに、皿ごとに地名が読み上げられるたび「そこの食材か」と自然に会話が転がっていくのが面白かった。とりわけ視線が集まったのは、入り口の生ハム原木が運ばれてきて、目の前でスライサーから薄く引かれていく場面。おかわりに手が伸びる人も続出した。事前に「多めに」とお願いしてあったぶん全体の量もたっぷりで、最後まで満足度の高い会になった。
まとめ・次回予告
産地の名前が、そのまま味の輪郭になる。神保町で旬の地図を辿るような、そんな一軒だった。2階のダイニングは少人数の会から貸切まで懐が深く、こうした美食倶楽部の食事会にはうってつけだと思う。
TERIYAKI美食倶楽部では、こうした名店を貸し切っての食事会を続けています。次回の会の案内も追ってお知らせするので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
店舗情報
店名:ALTER EGO(アルテレーゴ)
ジャンル:イタリアン/イノベーティブ
住所:東京都千代田区神田神保町2-2-32
アクセス:神保町駅より徒歩約1分
電話:03-6380-9390
予算:ディナー 2万〜3万円ほど
予約:コース一本(要予約)
グルメアプリ「TERIYAKI(テリヤキ)」やオンラインサロン「TERIYAKI美食倶楽部」、グルメECサイト「TERIYOSE」などの運用を行っています。
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