京都・山科の住宅地の一角に、住所を公開しない一軒家がある。「299」と書いて「ニクキュウ」。犬好きの店主が肉球から名付けた、1日1組限定のフルアテンド焼肉だ。
2025年6月にオープンするや否や、瞬く間に予約困難店となり、僕が訪ねたタイミングで最短は2年半後。年間1,500食以上を食べ歩いている僕でも、ここに座るための時間軸は容易じゃない。

住所非公開、1日1組。京都・山科の「知る人ぞ知る」一軒家
「299」を運営するのは、20代の若き店主。兵庫の焼肉店、そして精肉店で経験を積んだ後、独立してこの一軒家を構えた。一日に向き合うのは、たった一組。だからこそ、ひとりひとりの食べる速度に合わせて、肉と火と皿が組み立てられていく。
住所もメニューも、その日その席に座らないと見えてこない。「焼肉店」という器の中で、ここまで肉と一対一で向き合える場所はそう多くないと思う。

12品で26,100円。コースの全体像
コースは全12品で26,100円。最初に出てくる前菜の段階から、ここが普通の焼肉屋ではないと分かる構成になっている。
但馬牛のレバーパテと、21種スパイスの和牛タルタル
口火を切るのは但馬牛のレバーパテ。血の塊や筋を全て丁寧に取り除いてから仕込まれたという一皿で、レバー特有の鉄っぽさが消え、ねっとりとした旨みだけが残る。

続いて和牛タルタル。ハラミとサガリを合わせ、21種のスパイスでまとめた一品に、36ヶ月熟成のパルミジャーノと24ヶ月熟成のミモレットを目の前で削りたてで重ねていく。チーズの結晶のシャリッとした食感と、和牛のねっとりした脂が口の中で交差する。これは焼肉のプロローグというより、肉料理として完成された前菜だ。

神谷商店のブランドタン — 一本を縦スライスで食べ比べる
圧巻は東京・芝浦の老舗内臓卸「神谷商店」のブランドタンだ。神谷商店のホルモンは、全国でもごく限られた店にしか卸されない希少品で、京都ではこの「299」だけが扱っている。

面白いのは、そのタンを縦にスライスしてくること。タン先の引き締まった赤身から、タン元の脂が乗る大トロ部分まで、一本の中の食感と脂の乗り方の違いを順に食べ比べる構成になっている。同じ部位とは思えないほど、口の中で表情が変わっていく。


無菌ミノのてっさ仕立て
続いて出てきたのが無菌ミノ。海外産グラスフェッドビーフの最上位ランクだけを選び抜いたものを、店主が1枚ずつ氷水で締めてから、フグのてっさのような薄造りで供される。
口に入れた瞬間、ミノとは思えないクリーンな甘みが立ち上がる。冷たさと薄さが食感を完全に作り変えていて、これは「ミノ」というラベルで語っていい料理ではない。

紀州備長炭で焼く、ジュエルミートと産地を跨ぐ雌牛たち
焼台に火が入ると、空気が変わる。炭は紀州備長炭。炭との距離、上向きダクト、分厚い網。それぞれが計算され尽くしていて、煙は上に逃げ、肉には遠赤外線だけが入る。

その日のジュエルミート(特別な希少部位)は、ヒレのお尻側「テート」。ポン酢とガーリックチップスで合わせる構成で、ヒレ特有の繊細な肉質に、ガーリックの香ばしさとポン酢のキレが乗る。

軸となる神戸ビーフのメスに、大和榛原牛のフリ身、熊本もり和牛のカイノミと、産地を跨いで雌牛の旨みを編んでいく組み立て。一店舗で複数ブランドの雌牛を、しかも狙った部位だけで弾けるというのは、店主の仕入れの腕がそのまま皿に出ている。


締めは12時間炊いたテールスープのあんかけご飯
最後に出てきたのがテールスープのあんかけご飯。12時間、沸騰させずにじっくり炊いたというスープは、見た目が透き通っているのにコクが深い。あんを纏わせてご飯にかけ、添えられた生姜のタレを少し落とす。
これまで食べてきた肉の脂が、生姜の清涼感ですっと引いていく。コースの締めとして、これ以上ない一杯だった。

一皿ごとに、肉の輪郭が解像していく
「299」での時間は、いわゆる「焼肉に行った」という感覚とは違うものだった。一皿ごとに、肉という素材の輪郭が一段ずつ解像していくような時間。仕入れ、仕込み、火入れ、合わせるタレ、その全てが一組のために組み立てられていることが、最初の一品から最後の一杯まで通底している。
住所もメニューも、その日その席に座らないと見えてこない店。京都・山科で持てる、贅沢な時間だった。次に座れるのは、また何年か先のことになる。

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