TERIYAKI

2020年5月28日

【後編】北九州、戸畑から世界へ羽ばたく照寿司 渡邊氏のバックボーンに迫る!


【後編】北九州、戸畑から世界へ羽ばたく照寿司 渡邊氏のバックボーンに迫る!

こんにちは。テリヤキ編集部です。本日のコラムでは、「堀江貴文VS.鮨職人 鮨屋に修行は必要か?」の一部抜粋をお届けします。本日は福岡にお店を構える『照寿司』の店主、渡邊氏と堀江氏との対談となっています。

 

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渡邊貴義/TAKAYOSHI WATANABE

1977年、福岡生まれ。北九州戸畑にある『照寿司』の三代目として生まれ、ホテルで働いたのち、28歳で店主となる。パフォーマンスも話題となってSNSでブレイク。日本全国、海外からも多くのフーディが訪れる。Instagramのフォロワーは21,000人を超え、ハッシュタグの「#これが照寿司のやり方」と、眼光鋭く鮨を掲げるスタイルは、多くの鮨ポストでもコピーされる人気ぶり。

「『すきやばし次郎』をネットで調べながら月五人くらいのお客さんに握ってました」(渡邊)

堀江:なんで実家に戻っちゃったの?

渡邊:完全に親の敷いたレールです。

堀江:あんまり考えてなかった?

渡邊:おっしゃるとおりですね。

堀江:お父さんは握ってるんだよね。

渡邊:うーん、もう経営者って感じでしたね。だから、生え抜きの職人がいなくて、板前に入っては辞める。いいようにされていたと思います。

堀江:戻ってからはどうだったの?

渡邊:ネットで鮨のことを調べまくっていました。

堀江:おお、やる気を出して。

渡邊:いや、やることがないから。

堀江:(笑)。

渡邊:『すきやばし次郎』のガチの江戸前鮨を見て、「こんな鮨もあるんだ!」って。北九州にもこれだけ食材があるんだから、俺もできるかもしれないと思ったんです。十三年前ですね。

堀江:で、どうなったの?

渡邊:できるわけないですよ。なーんにもできなかった。そのまま、十年くらい。

堀江:十年、なにしてたの。

渡邊:なにもできないままカウンターでただ握っていました。

堀江:握ってはいたんだ。お客さんは?

渡邊:来るわけないですよ。

堀江:え、どういう状況?

渡邊:いやいや、カウンターにネタケースがある、ふっつーの街場の鮨屋ですよ。セットが三千円です。

堀江:そこで握り続けてたんだ。

渡邊:そうです。三千円の鮨をひたすら握り続けていました。

堀江:でも『すきやばし次郎』を意識してたんでしょ?

渡邊:そうですよ。

堀江:行ったの?

渡邊:行かないです。ネットで見ながら、それっぽく握るんです。

堀江:なんだそれは。

渡邊:だから、”江戸前のトラディショナル鮨”っぽく握っていたんですよ。

堀江:お客さんの反応は?

渡邊:反応もなにも、マジで一ヶ月五人とかですから。

堀江:あははは(笑)。居酒屋感覚で来る人も……戸畑まで来ないか。

渡邊:来るわけないです。

堀江:お店はどうなってるの?

渡邊:仕出しでやっていけるから大丈夫なんです。

堀江:なるほど!メインは仕出しで、一応カウンターもある。息子がやるならいいよ、って感じか。

渡邊:そうです。

堀江:そうかー。お父さんが経営者だからやっていけたんだ。

渡邊:まあ、お金のことは相当言われましたよね。

堀江:いや、バリバリの職人だったらもっと面倒くさいよ。

渡邊:今でこそなにも言われなくなりましたけど、その十年は、ずっと戦いでしたよ。相手は父親だったり女将さんだったりするんですけど。

堀江:戦ってたんだ。

渡邊:そうです、世界と戦っていたんです。誰も来ないけど買い続けるって、戦いですよ。

堀江:地元のいいものを買いはじめたわけだよね。『すきやばし次郎』に対抗して。

渡邊:そうなんですよ。当たり前ですけど、お金がかかって。当時はお店も予約制じゃなかったから、いつお客さんがいらっしゃるかわからないのに買ってるんですよ。どんだけ買って捨てたか、どんだけ自分で食べたか……

堀江:よく十年我慢したよ。熟成鮨の『すし邑』の木村さんも、相当暇で、相当研究して、相当捨てたって。

渡邊:ホントにとんでもないですよ。例えば売上が一ヶ月に一五〇〇万円だとするじゃないですか。そうしたら原価が八〇〇万とか九〇〇万のときがありましたから。アホみたいに買ってました。

堀江:仕出しがるから大丈夫なんでしょ?

渡邊:いや、それでもやっとのときもありましたよ。儲けがなくて、ただ存在するだけの鮨屋(笑)。

堀江:でもまあ、それならギリギリ我慢して続けられるよね。

 

「目ヂカラを開放してくれた息子に感謝しなよ」(堀江)

堀江:見せ方の意識しはじめたのは?

渡邊:それは最近ですね。

堀江:なにが転機だったの?

渡邊:なんだろうなぁ。

堀江:昔はメガネかけていたよね?今はコンタクトレンズ?

渡邊:そうです。

堀江:なんでコンタクトに変えようと思ったの?

渡邊:僕はメガネを気に入っていたんですけどね。

堀江:僕は嫌いだったよ。

渡邊:ああ、息子がプールに行くのにコンタクトしたんですよ。

堀江:それでうらやましかったの?

渡邊:そうです。うらやましくて、やってみたんです。そしたらめっちゃよかったんですよ。視界も広くなって。

堀江:そうしたら目ヂカラが発揮されたと。これはもう、息子に感謝しなよ。

渡邊:はい、感謝します。

堀江:写真を撮られるようになったのは?

渡邊:鮨と携帯電話のカメラって相性いいんですよ。それで、「こんなんあるんですよ」ってネタを手に持って見せて、写真を撮ってもらうようになって、ネタを持つ高さを上げていったら、自分も入るようになった。だったら、写っちゃおうと思って。

堀江:SNSは初期から使ってたの?

渡邊:最初にFacebookをはじめたんですよ。暇だったらか、買ってきた自慢の食材を載せていただけ。「いいね」は五人くらいしかつけてくれないけど、とにかく毎日「どうだ!」「どうだ!」とばかりにただ載せていました。

堀江:きっかけはFacebookだったんだ。

渡邊:そうです。そしたら徐々に浸透して、東京の意識の高いフーディたちが来てくれるようになたんです。

堀江:そのタイミングでコンタクトにしたの?

渡邊:いや、メガネですね。なにしろ、メガネは自分のトレードマークだと思っていましたから。

堀江:完全に間違えてるよね。

 

Instagramはすごい。ニューヨークから戸畑に映画撮りに来るんですよ?」(渡邊)

渡邊:Instagramは、堀江さんとマカオに行ったときにはじめたした。それまでは「インスタ?なにそれ、Facebookで十分だよ!」なんて語気強めで言ってたんですけど。

堀江:そうか、マカオまではやってなかったんだ。でも、インスタはすごいよね。はじめてよかったじゃん。

渡邊:ホントに、インスタはとんでもないですよ。The Hungry Tourist とは、海外の有名インスタグラマーも来てくれはじめて。先日なんてメッセンジャーで「私はあなたの映画が撮りたい」って。完全にGoogle翻訳なんですけど。

堀江:撮ったんだよね。

渡邊:四日間、密着で撮りました。うちのインスタを見て、ニューヨークから北九州の戸畑まで映画を撮りに来てくれる。考えられないですよ。堀江さんと会って一年くらい。シンデレラとは似ても似つかないけど、シンデレラストーリーっていうのかな。

堀江:これからも十年の鬱憤を爆発させてよ。

渡邊:最終形態はチャップリンかMr.ビーン。

堀江:渡邊さんは面白系でいいんだよ。英語しゃべれないんだし。入り口はなんだっていい。素材と技術は世界最高峰なんだから、堂々と迎え撃てばいいじゃん。

渡邊:大義として、僕は産地に恩返しをしたいんですよね。九州と山口の素晴らしい素材なしには『照寿司』は語れない。産地の素材の価値を高めようとして努力していたら、いつのまにか自分の価値も高まって、世界からお客さんが来てくれるまでになった。とんでもないことが巻き起こっているなぁって思います。

堀江:うん、完全に巻き起こってるよ。

渡邊:「照寿司前」「照寿司後」ってくらいのことが起きてるんです。

堀江:自分で言っちゃうところがいいね(笑)どんどん言ったらいいよ。

渡邊:誰も言ってくれないから(笑)戸畑から大きな声で言わせてもらいますよ、「これが照寿司のやり方」!!

 

けっして諦めなかったから、今がある

よくぞ、戸畑から世界へ。素直にすごいと思う。渡邊さんは職人としてのベースがあって、いつも高みを目指し、さらに体力があるから動きがいい。この一気に動ける感じが、チャンスを掴む人とそうでない人の違いです。

 

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