TERIYAKI

2026年5月21日

マンダリンチキンライスの本家、丸の内に上陸 CHATTERBOX CAFE


先日、丸の内ビルディング5階にオープンしたばかりの「CHATTERBOX CAFE」へ、TERIYAKI美食倶楽部の特別コースとして4名で伺った。シンガポールの本家マンダリンチキンライスを、コース仕立てで欧州ワインと合わせて味わえると聞けば、行かないわけにはいかない。ディナータイムにゆったり卓を囲み、話題のシンガポール料理の現在地を確かめてきた。

シンガポール半世紀の名店、ついに丸の内へ

CHATTERBOXは1971年、シンガポールの名門「マンダリン・オーチャード・シンガポール(現:ヒルトン・シンガポール・オーチャード)」のレストランとして誕生した。屋台料理だった海南鶏飯を、当時のドイツ人シェフがホテルメイドの一皿へと昇華させた、いわゆる「マンダリンチキンライス」の発祥店である。香港、マカオ、フィリピン、台湾を経て、満を持して2026年1月26日に日本旗艦店として丸の内に上陸した。

場所は丸ビル5階。二重橋前駅から地下直結で、東京駅丸の内側からも至近の好立地だ。70席を超える店内はグリーンとベージュを基調にした上品な内装にトロピカルな意匠が控えめに添えられており、丸の内らしい落ち着きと南国の解放感が同居している。オープン直後から話題が話題を呼び、現在はランチを中心に予約の取りづらい状況が続いているそうだ。

シンガポール料理に欧州ワインを合わせるコース

この日は乾杯から面白かった。スマロッカのカヴァで、皮の薄いチェリートマトをまるごと漬け込んだマリネをつまむ。トマトの酸味と泡の細かさで、口の中がいい具合にニュートラルになる。

続いて出てきたのは、シンガポール風サテ、季節野菜のサンバル炒め、エビのレモンバターソースの三品盛り。サテはピーナッツソースの香ばしさがふわりと鼻に抜け、サンバルは唐辛子と発酵調味料の輪郭がきっちり立っている。エビはふっくらと火が入り、レモンバターの軽さで決して重くならない。合わせるのはカリフォルニアのヴィオニエ。白い花とアプリコットを思わせる香りが、ピーナッツや唐辛子と意外なほどよく馴染む。

骨まで滋味、薬膳仕立てのバクテー

個人的に最もハッとさせられたのがバクテーだった。黒豚の骨付きスペアリブを、秘伝のスパイスとハーブで長時間煮込んだ薬膳スープ仕立て。胡椒の鋭さと、八角や甘草系のやさしい甘みが交互に立ち上がってくる。スープを一口飲み込んだ瞬間、体の芯にじんわり熱が入ってくる感覚があり、思わずスプーンを止めて余韻を味わってしまった。

ここに合わせるのが、コート・デュ・ローヌのロゼ。やや骨格のあるロゼで、スパイスの効いたスープに負けず、豚の脂をきれいに洗い流してくれる。ペアリングが料理に追随するのではなく、対話するように組まれているのがよく分かる一品だった。

ロブスターを贅沢に使ったラクサ

続くはロブスターのラクサ。ココナッツミルクとエビの出汁を重ねた濃厚なスープに、ぷりっとしたロブスターの身がごろりと潜んでいる。一口目はココナッツのまろやかさ、二口目に唐辛子と海老味噌の旨味が追いかけてきて、最後にじんわりとした辛さが残る。ヌードルをすするたびに、スープの層が見えてくる作りだ。

ペアリングはコーテ・マスのオレンジワイン。やや酸化的なニュアンスを持つオレンジワインが、ココナッツのコクとスパイスの複雑さを受け止めてくれる。白でも赤でもなくオレンジを持ってくる選択は、なかなか粋だった。

看板、マンダリンチキンライス

そしていよいよ本丸、マンダリンチキンライスである。ふっくらと蒸し上げられた鶏肉は、80度ほどのスチームでじっくり火を入れているそうで、口に入れると体温に近いほのかな温かさのまま、繊維が驚くほどしっとりとほどけていく。臭みは皆無、噛むほどに上品な甘みがにじみ出る。これが屋台の海南鶏飯をホテル料理へと押し上げた答えなのか、と納得させられる一皿だ。

鶏の出汁で炊いたジャスミンライスは、香りが立ちながらもベタつかず、米一粒一粒がきれいに立っている。自家製チリソース、ジンジャーピューレ、ダークソイの三種をそれぞれ試したうえで、最後はダークソイ+ジンジャーの組み合わせに落ち着いた。合わせたのはプリミティーボ・ディ・マンドゥーリア。南イタリアの果実味豊かな赤が、鶏の旨味とダークソイのコクをふくよかに包み込む。チキンライスに赤、というのは挑戦的だが、これがしっかり成立しているのが面白い。

締めはココナッツシェイクで、口の中に清涼な余韻だけを残して静かにコースが終わる。デザートで派手に締めず、シェイクで着地させる構成も気が利いている。

丸の内という舞台で味わうシンガポール

4名でゆったりと卓を囲み、料理ごとに感想を交わしながらコースが進んでいく時間は、それ自体が一つの体験だった。シンガポールの屋台で出会えば数百円で味わえるはずの料理を、ホテルメイドに磨き上げ、さらに欧州ワインとのペアリングという文脈に乗せて提供する。この「飛距離」こそが、丸の内でCHATTERBOXを体験する意味だと思う。

本場の屋台文化への敬意を保ちながら、ファインダイニング寄りの一段上の体験へ仕立て直す手つきが、最初の一皿から最後のシェイクまで一貫していた。

まとめ:話題が落ち着いた頃に、もう一度

シンガポールの食文化を、丸の内という舞台に持ち込んだ意欲的な一軒だ。オープン直後の熱気で予約が取りづらいのは仕方ないが、話題が落ち着いた頃に、今度は単品で気軽に通いたい。本家のマンダリンチキンライスがランチで食べられる、というだけでも、丸の内に来る理由が一つ増えた。

店舗情報

CHATTERBOX CAFE 丸の内店

住所:東京都千代田区丸の内2-4-1 丸の内ビルディング5階

最寄駅:二重橋前駅/東京駅

営業時間:ランチ11:00〜15:00(L.O. 14:30)/ディナー17:00〜23:00(L.O. 21:30)

定休日:無休(1/1および法定点検日を除く)

電話:03-6257-5866

テリヤキ編集部

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